4⃣ 癌骨転移 激痛で救急車 眠れぬ夜

骨転移の激痛で動きにくい私に読み
聞かせをしてくれる娘。悟ったよう
な飼い猫。
苦しむ母の姿だけは見せないですみ
たいと笑顔を貼り付けた頃。
<救急車のお世話になる痛み>

癌が脊椎近くに転移して日に日に痛みと
不安が増した。
まだまだ幼い娘がやっと本が読めるように
なってきて、横になることの多い私のそば
で、本を読んでくれるのが日課となった。

「もっといっぱい読んであげる。ママ
 の好きなお話全部読んであげる。」

痛いのと、申し訳ない気持ちとで涙が出そ
うになるのを力いっぱいの貼り付けた笑顔
でごまかした。
赤ちゃんから育てた飼い猫が、不思議と背
中の痛む場所に寄り添うように、ゴロゴロ
と鳴音を立ててくれた。気持ちよかった。

猫の鳴音は痛みに効くと聞いたことがあっ
った。愛猫の鳴音は本当に痛みに効く気が
した。



ある夜、あまりの痛みに救急車(無音)
を呼んだ。電気を消し、這って自室から
玄関先まで、音を立てないように移動した。
目に涙を一杯ためた娘が、私の頭をポンポ
ンとなでてくれた。
「ママ食べすぎたの?痛いのすぐ直るから
 大丈夫。」

嗚咽を奥歯でかみしめた。

「生きて、この子のそばにおるわい!」
娘の手の温もりを感じて、お腹の底から、
力が沸き上がった。担架の上で、精一杯
の満面の笑顔を作り、娘の手を握った。